つっきーで広がる世界

 もしグーグルマップなどでリアルタイムにどこのエリアに海外からの人が居るかを濃度であらわせるとしたら、長野市のなかの1166バックパッカーズの部分だけやたら色が濃かったりするだろうなぁ、なんてことをよく考えていた。宿泊者の率でいうと、日本人ゲストの方が過半数を占めていたといえど、それでも毎日のようにヨーロッパ、オセアニアや北米から、ときどきアジア諸国や南米、アフリカ大陸なんかからも海外からのゲストが来て、彼らの壮大な旅の話や働き方の話、学校の話、政治の話、宗教の話、そういうものを身振り手振りで学び、日本人の我々は拙い英語で自国のことを伝え、そうするとまた彼らの情報が入ってきて。もうインプットで頭がどうにかなってしまいそうな刺激的な毎日だった。

 だけどそれは、今回のコロナ禍で一変し、海外からのゲストは皆無となった。初めの1年こそ違和感があったが、正直それにも慣れてきた。「英語を話さないってけっこう楽かもしれない…」「予約サイトには出さず、ここを目指してくれる方に届けば…」なんて思うようになったり(海外ゲストは日本人ほどで各土地のゲストハウスにアンテナを張っているわけではないので、宿を決める入り口は予約サイト、かつ長旅なので価格の安い順にソートをかけるということも多い)。海外からのゲストはいないけれど、日本人のお客さんのおかげで少しずつではあるが稼働率も回復・安定してきた。

 ただ、ときどきふと思う。「泊まるだけの宿になっていないだろうか」と。宿泊施設なので、心地よく泊まっていただくことは大前提だけれど、「ここに来ると、やる気が出る。心が安定する」それを目指している自分にとって、何か言ってることとやってることのギャップを感じてもいた。

 そんな時に、ヘルパー制度がうっすらと始まった。昨年滞在していた 詩乃さん、先月滞在していた 智絵里ちゃんについても以前にブログで書いている。

https://orie1166.goat.me/CBCfa2pJ60
https://orie1166.goat.me/Jf0mPMUZb2

 ヘルパーが入ることにより、じわりじわりと宿の幅が広がる実感がある。これまでの運営ではほんの少しだけ宿の外側に居た人たちに「あ、1166バックパッカーズって聞いたことはあったけれど、行ってみようかな」という具合に。

 前置きが長くなったけれど、昨夜は ヘルパー・つっきーによるイベントが開催された。つっきーは数日後に卒業式を控える大学4年生。春には社会人だ。政治を学んでいる つっきーは大学2年の頃にデンマークに留学。その際にデンマークの政治を目の当たりにし、その後 4名で NO YOUTH NO JAPAN という「U30世代のための社会と政治の教科書メディア」を立ち上げている。

 つっきーの企画したイベントのタイトルは「デンマークで気づいた わたしと社会の向き合い方」。自己紹介、そしてデンマークで見たもの感じたものを話し、参加者も感じたことを隣近所の仲間と話し、「ヒュッゲな時間を過ごしましょう」という感じだった。ちなみにHygge / ヒュッゲというデンマークの単語は「居心地がいい空間」や「楽しい時間」というように訳されるが、たぶんあれは日本語に直訳できない単語だと思う(語学を学んでいるとそういう単語は相互によく存在する)。

 偶然イベント日に宿泊予約した人もいれば、それに合わせて泊まりに来た高校生、告知してすぐに参加申し込みをしてくれた近所の大学生や社会人など、多様なメンバーが集まり、それぞれに新たな分野を学び、自分の言葉で話し、よい時間が過ごせたと思う。スタッフにとっても同世代の大学生が見ている景色を垣間見れて世界が広がる気持ちだっただろう。私としてもつっきーの話す内容もとても興味深いものだったし(とくにデンマークと日本の政治に関わる教育について)、宿としても話題の角度が変われば出入りする面々も代わり新たな出会いに満ちた時間だった。

 善光寺さんの御開帳も迫っているので次のヘルパーちゃんは取らずにいたけれど、4月頭にもう1名来てもらえたら面白いかもなぁ、なんて考えています。

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