町の中の村、天満村「雑貨と喫茶の店 露草社」

思考

大阪市北区の南森町。この町はわりとビジネス街で、平日はOLやサラリーマンが忙しそうに行きかっています。ラジオ局のFM802もあります。でも、少し路地を入ると長年変わらない顔を持つ、ひっそりした町並みが並ぶのをご存知でしょうか。休日になると、人や車の往来はぱたりとなくなり、大通りでさえも顔が違います。

路地では猫が日向でねっころがったり、おばあちゃんが軒先で談笑したり、子供達がのんびり散歩していたり、忙しい大通りとは違い平日でも時間の流れがとても緩やかな住宅街があるのです。そのエリアをみんなは「天満村」と呼んでいます。町の中に実はこっそりと村が存在するのです。

私はこの村の人、村民です。4年ほど前に京都と大阪の県境からこの土地へ引っ越してきました。もともとは交通の便がいいというだけで選んだ土地でした。梅田が近く、地下鉄、JRが乗り入れていて、少し行けば私鉄あります。それだけでもこの土地へ引っ越してよかったなぁと思っていましたが、夏には大きなお祭り、天神祭りがありました。こんな大きなお祭りが自分の土地のお祭りだと思うととても刺激的でした。

しかし、それ以外は随分と静かです。路地では流れる空気の温度も違う気がします。頬にあたるとひんやりとしてとてもほっとするようなかんじ。都会のまん中にこんなゆるやかな空気が漂う場があるとは思っていませんでした。

刺激的な時間があると思えば、それはほんの少しの期間だけで、あとはほとんどがのんびりした時間。ものすごい二面性をもつ土地。今、私はこの二面性を持つ村を愛し始めています。

この天満村は今、少しずつ、本当に少しずつ進化し始めています。村時間を大切にしながら。大きな町のようではありませんが、村らしく、こじんまりとしたカフェ、雑貨屋さん、古本屋さんが出来始めているのです。

店主の方は、村民の人もいれば、村民ではない人もいらっしゃるようです。村民ではない人はわざわざこのエリアを気に入ってこの村にお店を構えているようです。

2012年5月8日に新しいお店がオープンしました。

雑貨と喫茶の店 露草社

もともとは鉄道広告社ビルの中の一室で雑貨店を開いていらっしゃいました。このお店の形態が少し変わっていて、他のお店の方と共同でその一室を使いスペースを区切ってそれぞれのお店をされていました。

一つのお部屋に違ったお店が並んでいて、お店のようにきっちり区切られていないのでそれぞれのお店の店主同士が談笑されていることもあるという不思議でアットホームなスペースでした。(そのスペース自体は別のビルへ移転されています)

新しいお店は天満宮の門を出て表参道を川の方向へ少し歩くと左手に見えます。店内へ入ると奥の方へ開けたカフェスペースがあり、壁面には選りすぐりの雑貨や切手たちが並んでいます。雑貨は手作り作家さんのもの。内装は自分達でペンキをぬったりしたそうです。

店主の谷川さんは、天満村の住人ではなく、お住まいは別のところだそうで、この方も天満村に魅力をかんじてお店をオープンさせたそうです。

「もともと、お店から近くにある鉄道広告社ビルというところの一室のスペースを借りて雑貨店を始めました。天満村のエリアに来たのは、そのビルの中で同じようにスペースを借りていた「hitoto」さんというギャラリーでの展示を見るためでした。そこで、取り仕切っているオーナーさんに偶然出会い、その方の魅力を感じてその場で即決し、雑貨店を開くことになったのです。

1年ほど続けてみて、やはり自分のお店を持ちたい、そして喫茶もひらきたいと強く思うようになり、お店を捜し始めました。それはやはりこの天満村エリアで、と決めていました。

天満村は商店街があるおかげもあるけれど、必要なものがそろっている町。でも、それはセレクトされた物やお店が並んでいて、買う、食べるが充実しています。でも、町の雰囲気は地方都市みたい。地元は静岡ですが、地元のゆったりした雰囲気に近いです。それでも、下町すぎず、おばあちゃんと若い人がこの町に同居していて、そして、お年よりもおしゃれだったり粋な人が多いように思います。

今日お店によってくださったおばあちゃんは、パンに卵とハムと野菜をはさんだサンドイッチを自宅でつくって食べるんだっていっていました。ただパンを焼くだけじゃなくて、わざわざサンドイッチにする。そういう生活を大切にした人たちがいるように思います。

この町は鉄道広告社ビルのときもそうですが、ふらりと人が立ち寄って輪が出来て、他のお店さんとも行き来があり、でも、いい距離を保ってる。とても不思議な町です」。

露草社さんでは親子連れのお客様も多いようで、お子さんとお母さんがゆっくりできるようなお店になればいいなとおっしゃっていました。お話を伺っている間にもおばあちゃんや近所のおばちゃんがふらりと立ち寄られて紅茶をお召し上がりになりお帰りになりました。のんびりしたいい空気がただよっていました。

私のオススメはレモンケーキのセット。写真ではアイスのほうじ茶で450円、他のドリンクとセットだと500円。素材は国産の無農薬レモンに四葉のバター、アメリカ産の有機栽培JAS認定の小麦粉、九州産のてんさい糖と店主のこだわりの一品。

もともとはお母さんから受け継いだレシピだそうで、こぶりながらぎゅっとしていて食べ応えがあり、とてもやさしい甘さとふんわりとしたレモンの香りがします。他のメニューも素材からこだわったものが並んでいます。

この天満村エリア。少しずつ、ゆっくりと変化しています。近々また新しいお店もオープンします。この町、いえ、村を愛する人、村民たちがまた増えそうです。

雑貨と喫茶の店 露草社
定休日:火/祝日 11:30〜19:00
住所:大阪市北区天神橋1-14-4 友愛ハイツ1F


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書き手:

辻千香 GiantGrammy所属役者。育児休暇中。2009年3月に男子、2011年4月に女子出産。毎日、育児奮闘中。

Twitter: decoChika
blog:少年パンチ

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