シネ・リーブル梅田でドキュメンタリー映画『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』を観てきました。記憶が新鮮なうちに書き留めておきます。
雑なあらすじ
舞台は1950年代のニューヨーク。人々が行き交う活気あるまちです。
そんなまちに強引にすすめられた開発プロジェクトが高速道路の建設計画です。スラム街をつぶして住民を郊外の団地に住まわせ、立ち退いたところに高速道路を建設し、自動車をびゅんびゅん走らせる動きです。
それを阻止した人たちのひとりがこの映画の主役、ジェイン・ジェイコブズさんです。ジャーナリストで洞察力があり、行動力のある主婦なのです。
一方で都市開発の帝王、ロバート・モーゼスさんは住民の意見なんて聞かずに国からうまいこと開発費用をもらって地元の政治家にお金をばらまいて開発をすすめるめっちゃ悪い男として登場します。にくたらしい男なのです。
ロバート・モーゼスさんがすすめた郊外の団地はスラム化してしまい、数年後には爆破で取り壊されるシーンが何度も出てきて「悪役演出の癖が強いんじゃ〜」な内容となっています。
以下は気になったメモや感想です。
住民がつながりあえば状況は変えられる
彼女はムーブメントを加速させるためのデザイン演出がうまい人でした。政治家がよくやるテープカットシーンの代わりにテープを結ぶ姿を自分の娘にさせて写真を撮ったり、みんなでいっせいにバツ印のデザインのメガネをかけたり。
92分におさめるために彼女が取り組んだことのごく一部しか見ていないので、著書を読みたいです。
映画の中では時間の都合で触れられず、多様性という言葉でまとめられていましたが、スラムで暮らす人たちの多くは黒人やヒスパニック系の人たちだったと思います。このあたりの動きを追えば、今のジェントリフィケーションの流れが見えてくるんじゃないかと思いました。
ジェイコブズさんの街を元気にする4大原則
映画のフライヤーに「ジェイコブズの街を元気にする4大原則」として、この4つが紹介されていました。
- 街路は幅が狭く曲がっていて、各ブロックが小さいこと。
- 再開発をしても、古い建物をできるだけ残すこと。(家賃が安ければ若い学生や芸術家も住むことができる)
- 各地区には必ず二つ以上の働きを持たせること。(多様な人が多様な目的で、さまざまな時間に訪れる)
- 各地区の人口密度が十分高いこと。
このほかにナレーションの中で共感したのは、めっちゃあやふやな記憶ですが、「歩いている人が多いまちは楽しい」。映画の終わりのほうでも「歩いている人がそれぞれ別々のダンスをしていて複雑なバレリーナ」的なナレーションがありました。
郊外のまちが面白くなくなるのは歩いている人が少ないからというシンプルな答えのように感じました。江戸時代の幕末に人気を博した大阪のガイドブック「浪花百景」とかも、風景の中にまちを歩いている人がたくさん描かれていて、そこに僕らは惹かれているのではとナレーションを聴いて感じました。
終わりに
なんしかこのドキュメンタリー映画は、まちの課題との向き合い方を考える良質なテキストと言えるのではないでしょうか。