もし看護師を病院の外に連れ出したら? 奈良県山添村のコミュニティナース・荏原優子さんが語る、これからの医療人材の活動領域。

奈良県

昨日、山納さんが開催されているTalkin’Aboutに参加してきました。話題提供者はコミュニティナースの活動をされている荏原(えばら)優子さんです。

めっちゃ興味深い内容だったので、自分の備忘録をレポート風に書いてみました。




看護師から青年海外協力隊へ

もともと5年間、神奈川県の救命救急センターで働いていた荏原さん。3日で命を落とした患者さんの様子などを見て「もっと手前で救えるのでは?」と感じていたと言います。決定的だったのはご自身のお父さんが入院されたご経験。いつも患者さんを診ているのに、いっしょに住んでいる家族の体調の変化に気づかず、初めて患者の付き添いという立場で病院を訪れたのだとか。

いろいろ考えている頃、「一番困っている人のところに行こう」と思い立ち、青年海外協力隊に入り、バングラデシュに2年間赴任します。

バングラデシュは医療過疎地域です。人口6000人に対し、コミュニティクリニックと呼ばれる病院がひとつ。しかしそこで荏原さんが目の当たりにしたのは、日本では見られない光景でした。

なんと医療従事者が自治会活動に参加しているんです。「地域で赤ちゃんが生まれた人いませんか?」とヒアリングし、「誰々の娘が最近妊娠したらしいよ」と聞いたり。予防接種の話をしたりして、すごく身近なところに医療に関する知識をもっている人がいる、というシステムって日本にあるのかなと思いました

日本に戻った荏原さんは、日本社会に馴染めなかったそうです。仕事を探していると奈良県でコミュニティナースという取り組みがはじまったところでした。

コミュニティナースとは?

コミュニティナースとは、住民といっしょに毎日の楽しいと心と体の安心をつくる医療人材というのが目指すところのようです。

こちらのサイトの画像をもとにお話されていました。

プロジェクトについて | コミュニティナースPJ
はわくわくできる毎日をつくりますいつも地域の中にいて、〝健康的なまちづくり〟をする医療人材です コミュニティナースとは? 病院や福祉施設、訪問看護に従事する看護師と異なり、 地域の中で住民とパートナーシップを形成しながら、 その専門性や知識...

医療の仕事は縦割りで、横を行き来する人がいないというのがジレンマ。その打開策がコミュニティナースなのだと僕は解釈しました。

元々は海外で広まった、社会的アプローチとしての看護のかたちで、日本では矢田明子さんさんという方がイチからコミュニティナースのメソッドをつくり、育成しているそうです。

参照記事

いま注目の「コミュニティナース」に直撃取材!:看護マンガ・ライフ&キャリア記事|読み物|ナース専科
【看護師の新しい働き方】病院に属さず自由に働くコミュニティナースとは?
病院での看護師の役割に疑問を感じるけど辞められない、出産を機に退職したけれど病院勤務には戻れないなど、様々な悩みを抱えている看護師も多いかと思います。 看護師になったら病院で働くことが当たり前だと思っている方も少なくない

奈良県はそういう存在が必要ということで、荏原さんは奈良県山添村の臨時職員(集落支援員)としてコミュニティナースの活動をしているそうです。奈良県に移住してコミュニティナースの活動をしている方は4人いて、それぞれ給料の出処が違うのだとか。

荏原さんが担当するのは山添村の東山地域。村にはほかに豊原地域と波多野地域があり、それぞれ隣接する奈良県宇陀市、三重県名張市、三重県伊賀市が生活圏で、3つのエリアの生活圏は違うようです。

荏原さんは自己紹介がてらに地域の方たちに話しかけたり集会に参加して、仕事する中心地として農協のガソリンスタンドを選んだそうです。そこで午前中は常駐し、給油がてらに訪れる村民の顔色を診たりして健康チェックしているのだとか。

独特の枠組みの中で仕事ができたと荏原さんは語ります。大きく分けて3つ。

・既存の取り組み
子育ての現場、保健師さんなどと顔合わせ。教育委員会、社会福祉協議会への顔出し。お祭りやイベント、観光行事、それぞれ縦のつながりのところを縦横無尽に。

・既存の取り組み以外
インフォーマルな集まり。女子会とか。そこで検診の話をしたり。

・住民としての枠
昔やっていたラジオ体操の復活。

1年取り組んだことで見えてきたことや成果

こういった取り組みの中で荏原さんが考えているのは、認知症の早期発見など。

1年活動していく中の成果として、荏原さんは村に対する期待値があがったことと、互助力という支えができつつあることを挙げました。

お母さんたちの中で、これから保育園がある子たちに『家の子どものいらない服あるからあげるね』という言葉が出てきたりもしたんですよ。おばあちゃんとかお茶しているときに、買い物に行くの(ために車に乗るのがこわい?)と言う声を出し始めたら、『それだったら私が連れて行くよ』という声が出たり。

いろんな世代の声が集まるコミュニティをつなげることで、少しずつそれぞれの状況を理解した住民が支えあう状況が生まれているようです。

奥大和移住交流推進室長の福野さんという方が「これは看護師を外に連れ出す社会実験だから」といって率先し、奈良モデルを目指しているようです。

めっちゃダイジェストで書きましたが、なんとなくこんな話をされていました。

その後、参加されていた方たち自己紹介や質問などが交わされていきました。医療現場にいらっしゃる方たちが3〜4割ほど参加されていたと思います。

どなたかの質問の流れでコミュニティナースに必要な能力は3つで、ファシリテーター能力、対話力、ネゴシエーション力と荏原さんが語っておられたのが印象的でした。

また、以前グリーンズで取材させていただいた闘病経験を価値に変える「ダカラコソクリエイト」の谷島さんも参加されていました。

もしがんになったらどう生きる? 闘病経験を価値に変える「ダカラコソクリエイト」谷島雄一郎さんに、後悔しないがんとの向き合い方を聞きました
もしもあなたが、あなたの大切な人ががんになったとしたら、あなたはどう生き、どう支えたいと思いますか? 現在、国民のふたりにひとりががんにかかり、働き盛りの世代の

荏原さんの活動の感想として、医療を使って人との距離を縮めているのが印象的だと語っておられたことが印象的でした。

最後に荏原さんはこちらの「コミュニティナースin奈良奥大和」のFacebookページをご紹介されていました。興味のある方はぜひご覧ください。

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追記

コミュニティナース~そこに看護師がいる、地域が人が元気になる | 看護roo![カンゴルー]
人口減少と高齢化が進む日本。特に地方では、いかにコミュニティー機能を維持するか、地域そして住民を元気にするかが重要な課題になっています。そんな中で注目されているのが「コミュニティナース」です。高齢化が進む中山間地域に移り住み、あるいはふるさ...
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